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特別インタビュー Vol.8 後編 ー 未来を生き抜く力 ー

最近、英語学習AIロボットMusio(ミュージオ)が家庭や教育現場に少しずつ浸透しています。

そこで、様々な方にご登場いただき、英語教育改革や子供教育×AIについての可能性や、AIと共存していくことになるであろう未来について探っていきたいと思います!

今回は第8弾として、10年後、20年後の劇的に変化するであろう未来に向けて、スタートアップ企業の育成や子供教育のアップデートにご尽力されているMistletoe株式会社 代表取締役社長兼CEO 孫 泰蔵氏にご登場いただきます!

今回はロングインタビューのため、2週にわたり前編と後編に分けてお届けしています♪
前編では、孫正義氏や孫泰蔵氏を生んだ孫家の子育てについて、今回の後編では、未来の世界とそこで生き抜いていくための子供教育、そして泰蔵氏が大切にしていることについてお話していただきました!

お子さまがいらっしゃる方はもちろん、何かに悩んでいたり迷われている方や自分を変えたいと思われている方も、ぜひ最後まで読んでみてください!

 

Lily:今年の3月から、Mistletoe株式会社さんとしてCCCさんとの合弁会社T-KIDS株式会社や、VIVITA株式会社で教育事業を展開していますよね!

そのきっかけとなったのは現在の子供教育に疑問を感じ始めたからとのことですが、どのような疑問を抱かれたのか教えていただけますでしょうか。

 

未来の子供教育①:100年に一度の激動の時代に突入!時代に合った新しい学びを!!


1972年生まれ。佐賀県出身。東京大学在学中に Yahoo! JAPAN の立ち上げに参画。その後、インターネットのコンテンツ制作、サービス運営をサポートする会社を興す。2002年、ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社を設立、デジタルエンターテインメントの世界で成功をおさめる。その後も、様々なベンチャーの創業や海外企業との大型 JV など、ある時は創業者、ある時は経営陣の一人として、一貫してべンチャービジネスに従事した後、2009年に「2030年までにアジア版シリコンバレーのベンチャー生態系をつくる」として、スタートアップのシードアクセラレーター MOVIDA JAPAN を設立。2013年、単なる出資にとどまらない総合的なスタートアップ支援に加え、自らも事業創造を行う Mistletoe 株式会社を創業。21世紀の課題を解決し、世の中に大きなインパクトを与えるようなイノベーションを起こす活動を国内外で本格的に開始。ベンチャーの活躍が、豊かな社会創造につながることを目指している。

 

泰蔵氏:僕は普段、世界中のスタートアップの人たちと会い、いろんなテクノロジーに触れていますが、最近のテクノロジーの進化の早さに本当に驚いています。
それに伴い、今の教育も時代に合わせてアップデートすることが必要だと感じました。

例えば、1900年のニューヨークの5番街では馬車が走っており、自動車はほとんど走っていませんでしたが、その13年後の1913年には、ほとんどが自動車で、馬車はほとんど走っていませんでした。
驚くべきことに、この変化が起きるまで13年しかかかってないですよね。

歴史的に見ると、がらりと風景が変わるというような革命的な変化が、100年に一度くらい起きているんですよね。
そんな、100年に一度の激動の時代にもう入っているのではないかと僕は思っています。

ご存知の通り、これからは自動運転の世界になり、人工知能が運転してくれる時代がくると言われています。
これからは、自動車を運転する能力や馬車を操作する能力は全く要らなくなります。
私たちが、「昔の人は馬を操作していて大変だな」と思うのと同じように、「昔は自動車を自分で運転しなきゃいけないなんて、大変だね。」と思われる日がすぐそこまできているのかもしれません。

もちろんこれは、あくまで想像であり、未来を予測することはできません。
ただ一つだけはっきりしているのは、今の子供たちは、私たちとは全く違う新しい世界で生きていかなければならないということです。

一方で、今の教育はどうなっているかというと、知識の正確な記憶が重視されていて、正しく知識を記憶して正しいタイミングで正しく出力できるというのが成績でも評価されていると思います。
この力では何が起きるかわからない、全く新しい世界では太刀打ちできないですよね。

これからの激動の時代において、どう変化していっても自分で道を切り拓いていける、未来をつくっていけるという力が重要で求められるのではないかと思います!

そのためのスキルとして、「4C」と言われている「クリエイティブシンキング」や「クリティカルシンキング」「コミュニケーションスキル」「コラボレーションスキル」など、そういったものが非常に大事になってくるのではないでしょうか。

ですが、残念ながらこういった力は今の学校教育だとあまり養えないんです。
先生が一方的にこれを勉強しなさいと教えて子供たちが学ぶことが多いですよね。
「ここ試験出るよ」って言われると、そこだけ一生懸命勉強するような感じで真逆なんです。
自分で未来を切り拓いていく力を身につけるためには、新しい学びにアップデートする必要が本当にあるなと感じたので、合弁会社であるT-KIDS株式会社を設立しました。

日本の国内外に新しい学びを生み出そうとしている方々が、自分で未来を切り拓いていく力を養えるプログラムやプロダクトをつくっているので、それらをワンストップでみられて、興味のあるものを体験できる場をつくろうということで始めました。

 

Lily:激動の時代に入っているとのことですが、自動運転以外に10年後、20年後先の未来はこんなふうに変わっていると泰蔵さんがお考えになるものがあったら教えていただけますでしょうか。

 

未来の子供教育②:近い将来に現れるシンギュラリティの姿とは?! 

泰蔵氏:植物が話して動くようになるのではないかと思っています。
ポストシンギュラリティですね。

例えば、日当たりが悪いところに植えられていた植物が、「ここに植えられてもね。日当たり悪いんですけど!」と言いながら自ら移動します。
人間が朝起きたら「あれっ?!いない」、「あっ、いつの間にかここにいたか」とか言いながら「どうしたの?!」と言うと、植物が「いや、ちょっと日当たり悪いんで移った」と話すようになると思います(笑)

 

Lily:すごくおもしろいですね!笑
植物とAIは融合するのでしょうか。

 

泰蔵氏:そうですね、厳密にいうと植物だけではなく、人間にもAIが偏在する世界になりますね。

例えば、植木鉢に湿度センサーをつけると、水がカラカラになった時に水が足りませんと信号を出し、それをスマホに「水を補充しましょう」と表示させるのは現在でもできますよね。
それを「喉が渇いたよー!」と言うようにすれば植物が喋っているようになりますよね。

ただ話すことはできるけど、植物たちが僕ら人間が話したことを理解し、会話できるようになるのかは別の話ですよね。
今、細胞間通信という技術研究が進められていて、細胞と細胞同士が直接、微弱な電流で通信をしているという研究結果が出ているそうなんです。
まだ制御するまでには至っていないようなんですが、いずれ研究が進み、将来的にはプロダクトが生まれて実際の通信を制御するということができるようになるのではないかと思っています。
人間の細胞と植物の細胞が直接やり取りをすることも可能になるのではないでしょうか。

その時、もちろんその途中にはAIが介在していて、人間の細胞と植物の細胞が直接やり取りをする時に、お互いがうまく折り合いをつける役割を担うと思います。

「シンギュラリティ=人間の能力が無限に拡張されること」と言われていますが、僕は人間だけでなく、あらゆる生き物の能力が拡張されていくと思います。
その時には、AIは限りなく自然に近づいていきます。
ここでいう自然とは、人間がそこに介在していないということを人工の反対という意味で自然ということです。

例えば、ディープラーニングのアルファ碁という囲碁のAIです。
ある一手を打った時に、棋士たちがざわざわしながら「なんでアルファ碁はあそこに石を打ったんだろう」「全然意味がわかんない」「打ち間違えなんじゃないの?!」と、しかしながら、終盤になった時にその石が効いてきて、そして最終的には人間が負けましたよね。
開発した人に聞いてみても、「アルファ碁がなんであそこに打ったのか私にもわかりません」と言っているんです。
ということは、人間はそこに介在していないんですよ。

最近ではこのような現象を、デジタルネイチャーと言ったりもするんですが、雨が降ってきたけどなんで降ってきたのかわからないといったようにAIも自然に近づいていくと思います。
今、植物が動いたら不気味に思うかもしれませんが、テクノロジーの進化とともに人間はそれを普通に受け入れていくと思いますよ。

そうなった時に人間がなんとなくここに座りたいなって思う、そのなんとなくをAIが把握し人間にもわかるように解釈してくれます。
「ここに座ると数分以内にちょっといいことあるようですよ」とAIが教えてくれて、「何かな?」と思っていたらふわーっとすごく気持ちのいい風が吹く、そんな世界が恐らくシンギュラリティの世界かなと僕は想像しています。

 

Lily:まだ想像がつかないので映画の中の世界のような感じですが、楽しそうな未来ですね!

そういった未来がどんどん変わっていく中で「未来を切り拓いていく力が必要」ということもお伺いできたんですが、実際に親の立場として自分たちが育ってきた環境と全然違うのでどうしていったらいいかわからないとか、子供たちに与えるものや体験など何を選定していったらいいかわからないといった親御さんたちは多いと思います。
親という立場において、今後、気を付けていく点、重視していくべき点を教えていただけますでしょうか。

また、泰蔵さんにも息子さんがいらっしゃるかと思いますが、ご自身が父親の立場になって意識されていることがありましたら教えていただけますでしょうか。

 

未来の子供教育③:子供に何を学ばせるかではなく、親が何を学ぶかが重要!

泰蔵氏:大きく分けると2つあります。

1つは姿勢です。
最近、いろんな方から、「うちの子供に何を勉強させたらいいでしょうか」「やっぱり英語とパソコンでしょうか」とよく聞かれるんですが、「いや、英語でもパソコンでもないですね」という話なんですよね。

なぜかというと、例えば英語は自動翻訳で会話できるようになりますし、プログラミングも将来はAIがプログラミングするので必要ないと思います。
「じゃあ、何を教えたらいいんですか」と言われますが、何を教えたらいいか、学ばせたらいいかの問いの仕方自体が間違っていると思います。

もちろん、語学はいつの時代も大事です。
それは文法を知っている、語彙が豊富ということではなく、異なる文化や価値観の人とコミュニケーションできる力は今後も人がいる限り重要で、それを身につけるのはすごく大切だと思います。
しかしながら、英語教育というと、わかりやすいこともあり文法や単語を身につけましょうとなりがちですが、そういうことではないんですよね。
「子供に語学を身につけてほしい」のであれば、親が自ら学んでいればいいと思います。

「私は英語を話せないし、もう歳だからいいんです」とか「この子には苦労させたくないから英語の塾に行かせようと思うんです」というお父さんやお母さんがいるんですが、親が一生懸命勉強していたら、それをみた子供も自然に興味を持ちますし、「英語で一緒に話しましょう」となると子供もどんどん学ぶと思います。

子供に何をさせたらいいかではなく、自分や自分の周りの人が楽しく生きていくためにこれから何を学んだらいいか考え、一生懸命やるのがいいと思います。

2つめは環境です。
教育のジレンマと僕は呼んでいるんですが、教える側が一生懸命創意工夫して提供すればするほど受ける側は受動的になってしまいます。

最近、アクティブラーニングが注目されていますが、いかに能動的に学ぼうという姿勢になってくれるかってすごく大事なんです。
次は何を学ぶんですかという受け身の姿勢だと学習効果が低くなりがちです。
もちろん嫌いなことを押しつけるのも同様です。

何かを提供するのではなく、自分が学びたいと思えるような知的好奇心がどんどん生まれる環境をデザインすることが大事だと思います。
周りの子供たちも進んでみんな探求学習していると、面白そうだな、僕もやってみようってなりますし、学んだり探求・研究したりする時に必要な道具などが何でも揃っていればそれを使ってどんどんやろうってなります。

空間的なフィジカルな環境も大事ですが、それ以上に人的環境が重要になります。
周りの人、例えばお兄ちゃんや先輩がすごいものを作っていると、やっぱりすごいな、僕もあの人みたいにすごいの作りたいって憧れるとおのずと高みを目指していきます。
そういうことに触れ合う機会を増やしていくことも大切です。

1つ目の「姿勢」の話に繋がるんですが、一番身近である親が一生懸命学び楽しい姿をみせると自然とそういう環境になるので、親自身が自分で環境をつくっていくことが大事なんです!

シリコンバレーやハリウッドもそうですが、周りにもの凄い企業ばかりあるので、ちょっとやそっとのアイデアじゃ全然おもしろくない、もっとすごいものを作ろうと試行錯誤するから、どんどんおもしろいアイデアが生まれるようになるんですよね。

だから、環境ってすごく大事なんですよね。

 

Lily:環境はすごく大切ですね!
子供たちもそうですが、これは大人にもいえることですね!
自分の姿勢や身を置く環境は、自分のためにも周りの方々のためにも重要ですね!!

最後に、読者の方々へ一言お願いできますでしょうか。

 

泰蔵氏からのメッセージ:「未来は自分で切り拓いてほしい、その力を身につけてほしい」

泰蔵氏:大学などでお話をする時に「何か質問ありますか」と聞くとほぼ100%、2つの質問をよく受けます。

「泰蔵さんが人生で大切にしていることは何ですか」と「泰蔵さんが人生で一番失敗した事例はなんですか」です。

これは、人生で大きな失敗をしないように先に学んでおきたいと思っているからだと思うんですね。
起業をしたいと思っている子ほど聞きたいと思っていると感じています。

実は、「何を大事にしてどうやったらよりよく生きていけますかね」と「どうやったらうまく失敗を回避できますかね」というのは結局どちらの質問も本質は同じで「どうやったらうまくやれるかな」ということなんですよね。

僕たちは情報社会に生きているので、ネットですぐに検索するクセがついているし、検索するといろいろ出てくるので、その情報を読むだけでなんとなく分かった気になってしまいます。
でも、じゃあそれを実際にやれるかは別の話ですよね。

個人的には、情報が溢れている今だからこそ、みんなが無意識に考えちゃう質問だろうと思っています。

インターネットがない時代だったら、情報をこんなに簡単に入手できません。
田舎だとなおさら図書館に行ったって古い本しかなくて、そこから探すのも大変でした。
だからこそ、自分で試行錯誤するしかなかったんですよね。
でも、試行錯誤したからこそ編み出した自分なりの技みたいなものも生み出せたんです。

逆に今、情報が溢れているせいで試行錯誤するというプロセスを全部無視して、検索して出てきたものを取り込もうとしてしまいます。
だからこそ、極意というか僕が大事にしていることは、「とにかく自分でやってみること」です。

父がよく「人に倣うな」と言っていたんです。
学校から帰ってきて父がいると、「泰蔵、お前今日学校で何習ったん?!」てよく聞かれました。
「分数の割り算習ったばい、ひっくり返してかけるとよ」と言ったら、「そうか、でも学校の先生のいうこと聞くな」と怒られました。
なんでそんなこと言うんだろうってずっと気になっていましたが、今になって自分が親になるとすごく深いなと思います。

父は、「自分で試行錯誤して、自分で知恵を絞って考えろ」と言いたかったんだと思います。
クリティカルシンキングってやつですね。
でもそれを「自分で何事も考えて知恵を絞るのが大事なんだよ」と言っても、その通りなんですけど、あまりにも普通すぎて記憶に残らないんですよね。
「学校の先生の言うこと聞くな、あいつら嘘教えるぞ」と言われると、結構ガビーンってショックを受けるので、記憶に残るんですよね。

つまり、父なりのものすごく工夫をした変化球的な言い方でグサッと僕の心に残るように伝えたクリエイティビティだったんですよね。
でも伝えたかったことは「自分で考えろ」ということ。
考えるプロセスや自分でやってみることが、未来を切り拓いていく上で一番必要だと思っています。
もし、自分の子供に一つだけ遺言を残すとしたら、「未来は自分で切り拓いてほしい、その力を身につけてほしい」と伝えると思います。

その力を身につけるためにも、まずは何でも自分でやってみることです!
世の中ではこうだと言われているけど本当にそうかなって、実際にやってみたらいろいろ感じることがあると思います。

世の中には、様々な課題があり、自分一人の力じゃ何も解決できないと思っている方も多くいらっしゃると思います。
でも、未来を切り拓く、自分がまず試行錯誤しながら変えていく、それをやっていると周りもおのずと影響されて、「俺も!」「私も!」となんとなく環境が変わっていき始めて、それに感化される人がもっと増えていき、気づけば途方もないと思っていたことでもその一歩があっという間に何かを変えることにつながることもあると思います。

 

Lily:本日は、貴重なお話をありがとうございました!
とても勉強になりました!!

最後の最後に、Musioとの記念撮影もお願いできますでしょうか。

泰蔵さん、本当にありがとうございました!!!

 

 

 

これまでのバックナンバー

・「特別インタビューVol.1 -AIを活用した新しい国づくりを-」はこちらから。

・「特別インタビューVol.2 -AI×東京英語村-」はこちらから。

・「特別インタビューVol.3 -AI×発信力を高める授業-」はこちらから。

・「特別インタビューVol.4 -AI×子供たちの未来を変える学び-」はこちらから。

・「特別インタビューVol.5 -髙島屋×ロボット-」はこちらから。

・「特別インタビューVol.6 -ロボットとの共存への扉-」はこちらから。

・「特別インタビューVol.7 -ロボットのいる生活-」はこちらから。

・「特別インタビューVol.8 前編 -父の子育て-」はこちらから。

 

 

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